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第215話 白鳥邸の鍵

Author: 花柳響
last update publish date: 2026-10-13 06:00:36

 鍵は指の腹へ冷たさを移した。

「今日じゃなくてもいい」

「……今日、行きたいです」

 怖い。

 廊下も階段も、父の書斎も、莉々花の声が残っていそうなリビングも見たくない。

 それでも、母の部屋だけは誰かに片づけられる前に見たい。

「先に入らないでください」

 征臣のまぶたがわずかに動く。

「私が開けます」

「分かった。開けるまで、ここにいる」

 鍵を封筒へ戻し、口を折った。鞄の中で落ちないよう、内ポケットの奥へ入れる。

 車内で彼が話したのは、管理会社の到着時刻と建物の状態だけだった。

 同行者は征臣と相沢、管理会社の担当者。人数を決めたのは私だった。警備員は門の外で待機し、屋内へは呼んだ時だけ入る。

 車が白鳥邸へ近づくにつれ、道路沿いの店が一つずつ記憶へ戻った。母と寄ったパン屋は別の看板になり、花屋だけが同じ場所にある。変わった町の中で、家だけが時間を止めて待っているように見えた。

 門前には報道の車が二台い
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